物件235 屋根が腐った家 劇的ビフォーアフターのアイデアをチェック
劇的!ビフォーアフター 物件235 屋根が腐った家 で紹介されている、リフォームの役に立つアイデアをチェックしましょう。
(前回が2棟まとめてのリフォームだったため、別物件としてナンバーを一つ飛ばしたようです)
今回の劇的!ビフォーアフター 物件235 屋根が腐った家 は、築120年の茅葺き屋根の住まいのリフォームです。
集落で最後に残っている茅葺き屋根ですが、茅が傷んでひどい雨漏りが発生。
床にひどい雨漏りの水が落ちて、タタミが水浸しで腐っているような状態です
土の土間に高い段差、隙間の多い木製建具など古い民家らしい弱点もそのまま残っています。
さらに住まいの裏は崖で、流れてきた雨水が床下に流れ込むような状態でもあります。
床がぶよぶよで傷みが予想され、低い流しや五右衛門風呂(最近は使っていないようですが)など水廻りもやはり使いにくい状態です。
隣に瓦葺きの2階建てが増築されているのですが、こちらは雨漏りで濡れた梁が腐って折れて、近くの電気配線部分には漏電の危険もあります。
2つの屋根の谷間の部分が弱点となり、そこに雨漏りが集中しているようです。
建坪は59坪と広いのですが、予算は2500万円と住まいの大きさを小さくすれば新築も可能なほど十分あります。
そこで無駄な部分を減築しつつ、茅葺き屋根の住まいをどこまで残せるのか、という点が一番の注目ポイントとなりそうです。
もちろん断熱や水廻りの使いやすさなど、快適さを高める内容にも注目です。
残す部分を保護しつつ、解体が進みます。
天井を剥がすと、煤で覆われた竹製の昔の天井が見えてきました。
囲炉裏やかまどの煙を小屋裏に通すことで竹や梁や茅が燻された状態となり、虫除けの機能や耐久性が増す効果があったのです。
茅葺き屋根の裏側の垂木となる竹などはまだしっかりしていて、燻製の効果が伺われます。
小屋裏が物置となっているのは、勾配が大きく小屋裏空間が広い茅葺き屋根の特徴です。
ここで増築部分を解体、基本的にお母さんの一人暮らしの住まいなので無駄に広い住まいは不要で、また駐車スペースも確保できます。
使える材料だけを残して全て解体、さらに崖に近い母屋の増築部分も解体します。
最初の住まいの広さに戻った建物は、床下はほとんどが腐ってひどい状態です。
茅葺きの屋根を残したまま、足場が組まれました。
そこに親族やご近所の人たちが集まり、屋根の茅を下ろすお手伝いです。
人の手でないと茅を外せないことに加えて、この集落で最後の茅葺き屋根を無くすので、思い出に残す意味合いもあります。
はじめに棟に乗る千木を外して(その下の茅はまだまだ綺麗な状態です)、みんなで茅を下ろしていきます。
茅の下のほうは煤で真っ黒、作業する人たちも煤で真っ黒になります。
茅おろしが済むと、茅を集めて農場に運んでいます。
古い茅なので比較的分解しやすく、堆肥として再利用するようです。
ここで住まいの傷んだ足元部分を補強、束石の周囲をコンクリートで固定。
束石の周囲をすり鉢状にコンクリートで覆うことで、地震で柱が動いても落ちない基礎としました。
防湿シートを床下の地面に敷いて、その上のガラスの廃材を利用して作った多孔質の軽石を敷きこみ、床下の調湿材とします。
茅葺き用の弱い小屋組みを取り外し、軒桁を補強して大きな垂木梁を掛けて大屋根を再生します。
屋根はガルバリウム鋼板の横葺き、棟には千木を再現したステンレスを設置しました。
ただ棟にステンレスを使うと、ガルバリウム鋼板の電蝕が気になるところです。
屋根のカラーは茅葺き屋根に似せて、形もそのまま入母屋を踏襲しました。
遮熱塗料を塗った屋根材を採用、屋根の角度が45度で縦横両方からの力に耐えやすい特徴も残ります。
屋根型は茅の厚みを再現、南面の屋根の一部を持ち上げる兜屋根を採用して、座敷からの見晴らしも改善しています。
塗り壁の材料として細かく砕いた茅を再利用、味わいのある壁に仕上げます。
北側の崖の危険な部分を切り崩し、さらに崖の足元に擁壁を作って新しくなる住まいを守ります。
さらに崖の斜面をヤシの実の繊維で作ったマットで覆い、金網で覆うことで斜面を保護します。
植生マットから草が生えることで、斜面から土が流れることを防ぎます。
リフォームが完了して、外壁の仕上げにも荒めの茅を入れて仕上げました。
棟の両側の懸魚(飾り)も、防腐塗料を塗って再利用しています。
アプローチの通路は水はけが良い瓦の再生材で舗装、主要な部分に手摺も付きました。
板戸と障子で2重戸とした玄関に入ると、正面に裏の崖の草が見える見通しが良い広い玄関ホール兼廊下を確保しました。
アプローチから裏に通じる通路にも手摺が伸び、床には瓦の廃材を再利用して仕上げています。
車椅子でも移動できる緩いスロープで、車椅子が必要になったときには崖側が玄関となる作りです。
玄関の両側に広い腰掛けスペースが備わり、その下が下足入れとしての機能を果たします。
床には廃材の丸太を薄く切って、貼りつめました。
玄関の障子には茅で作った特注スダレを追加、障子を上げると風通しもできます。
玄関とホールの仕切りには袖壁が付き、手摺を兼ねるようです。
玄関隣の東側がお母さんの寝室、朝日が入る明るい部屋です。
ここでも特注スダレがカーテン代わり、古い板戸は収納の扉として再利用です。
クローセットと水廻りの障子は共用で、片方を開けるとクローゼットが使え、もう片方を開けると水廻りに通じます。
2つの扉で仕切られる水廻りは、介護仕様のユニットバスやシャワー付きの洗面台、アコーディオンカーテンで仕切られるトイレまでワンルームです。
かなり広めの作りで、車椅子での利用にも対応しています。
お母さんの部屋の2面の障子を開け放つと玄関ホールと一体となり、奥のリビングダイニングキッチンまで見通せる一体空間となります。
リビングの入口には天井に使われていた煤竹で作った手摺付き、洗って味わいのある模様が出た竹は、LDKの天井材としても使われています。
タタミ敷きのリビング?は、昔の座敷の床の間が残り、縁側はフローリングに変更です。
崖側になるダイニングキッチンもフローリングで、古い格子戸を再利用して作ったダイニングテーブルが目立ちます。
小屋裏に眠っていた長持を再利用した食器棚も備わるキッチンは対面式、シンプルで使いやすい大きさとしています。
後ろに作業カウンター付きの収納も備わり、使い勝手と収納量を高めています。
母屋となりの牛舎や庭もリフォーム、芝生の丘付きの畑となりました。
日よけの東屋は、牛舎の廃材を再利用して作ったものです。
農具置き場やベンチが備わり、ゆっくり畑仕事ができます。
さらに庭には廃材の五右衛門風呂の鉄釜とレンガで作ったバーベキュー台や丸太のベンチが備わり、遊びに来た孫を迎えます。
今回の 劇的!ビフォーアフター 物件235 屋根が腐った家 は、古い住まいの作りを活用しつつ、新しい住まいとして一新したところが印象的でした。
予算を含めて新築してもよかったくらいに一新しましたが、材料や建具などの再利用率が高いところにリフォームの意味を感じられるところでしょう。
古い田の字型プランをそのまま活用、シンプルな4つの部屋割りをそのまま近い形で使っています。
一部屋が広い作りだった為に、玄関や寝室から水廻りやLDKまで、余裕のある空間を確保できたようです。
古い民家の味わいは残念ながらかなり弱まってしまいましたが、再利用のアイデアと快適で使いやすい住まいとして再生されたところが印象的なリフォームだったといえそうです。