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物件233 とんでもなく傾いた長屋

劇的ビフォーアフターのアイデアをチェック    住まいのリフォーム・リノベーション

 


劇的ビフォーアフターのアイデアをチェック



屋根が腐った家


とんでもなく傾いた長屋


頭の痛い家


 

住まいのリフォーム・リノベーション
では、
住まいのいろいろな改修方法や
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住まいのリフォーム・リノベーション情報が満載です。

 

物件233 とんでもなく傾いた長屋  劇的ビフォーアフターのアイデアをチェック

劇的!ビフォーアフター 物件233 とんでもなく傾いた長屋 で紹介されている、リフォームの役に立つアイデアをチェックしましょう。

今回の劇的!ビフォーアフター 物件233 とんでもなく傾いた長屋 は、築120年の京町2軒長屋のリフォームです。
元々は4軒長屋で2軒づつが2階部分でつながっていたようで、右側の1軒だけが新しい3階建てとなり、左側に残る2棟長屋が今回のリフォームの対象となります。

キョウヌイの呼ばれる着物に施す日本刺繍を仕事としているお母さん(内藤家)の住む長屋は、1階の一部を息子さんの仕事の事務所として使っています。
その長屋は、壁が大きく傾いた危険な状態です。
建具の一部などには職人技で手が加えられてはいますが、引き戸がしっかり動いていることが不思議なくらいで、閉めたときに隙間が大きく出来ています。
変形に強い日本家屋だったので何とか倒壊を免れているようですが、現在の作りの住まいでこれだけ壁が傾いていると倒壊していてもおかしくありません。

50cm段差の土間や手摺が無い2階の物干しや、離れのトイレに庭に出して隙間をカーテンで目隠ししたユニットバスなど、安全面や温度差などの点でも厳しい状況がたくさん見受けられます。
リフォーム予算は1500万円とかなり豊富ですが、これだけ傾いた状況や厳しい水周りなのでリフォーム費用も膨らみそうです。
また隣の長屋も一緒に傾いているので、こちらにもリフォームが必要となるのは仕方が無いところでしょう。
そこで番組初の2棟同時のリフォームとなりますが、二つの長屋で異なるであろうリフォーム内容の違いとコストに注目となりそうです。

今回は内藤家のお母さんが隣で暮らすご主人さん(田原家)に匠を紹介、室内を確認すると中身はほとんど傾きが見られません。
40年ほど前に傾きを隠すリフォームを行ったので、室内ではさほど傾きが感じられなかったのです。
ただ天井が吹き抜けで屋根裏も見えている土間の部分はリフォームされていないので、内藤家同様に大きな傾きが残っていました。

隣の建物との境目は、隣の建物に食い込んでいるような状態です。
この倒れこんでいるおかげで、倒壊を免れていたようです。
そこで田原さんもリフォームを決意、番組初の2軒同時リフォームとなりました。
田原さんが隣の理髪店さんに今回リフォームすることを報告、それを聞いて安心されたようです。

田原家はご主人と姪っ子さんの2人暮らしの住まいとなる予定で、内藤家は1階にあった息子さんの事務所も一時お引越しです。
2軒分の引越しが済んで、いよいよ解体がはじまります。
状況がかなり違っているので、同じような作りのはずの2軒で解体の仕方や手間が異なります。

あらわになった構造を確認すると、母屋が外れていたり数ミリしか柱にかかっていない梁など、危険な部分がたくさん見られます。
元々の4軒長屋が2軒長屋に切り離されたことでバランスを失い、傾きが始まったようです。
そこで仮補強を行った上で、住まいを支える土壁などを解体します。

足場の1階部分を落ち着いた色に塗装した合板で囲み、2階をスダレで囲むことで、京都の景観に配慮しつつリフォームを進めます。
基礎には全面に鉄筋を配してべたコンクリートの基礎を追加しますが、柱の下は枠で囲い、鉄筋を曲げて作ったフックを床に配置した上でコンクリートを打ちました。
基礎のフックを利用して、建物の傾きを引っ張り直すのでしょう。

内藤家の基礎は、ここで壁下の立ち上がり部分の鉄筋コンクリートも作ります。
柱が内側に倒れている田原家側は、建物をまっすぐにしないと基礎の立ち上がりを作れないのです。
ここで柱と梁のつなぎ目を補強、さらに外れている部分もはめ直して、建物をまっすぐになるまで引き上げる際に壊れることをふせぎます。

屋根からの下げ振りで47.5cmの傾きを確認、基礎のフックにロープをかけて引っ張ることで、慎重に骨組みをまっすぐに直していきます。
隣の建物からも離れ、家の傾きが直りました。
これで隣の理髪店の壁との間にも隙間が出来たので、この部分の外壁はリフォームが必要でしょう。

基礎に土台を敷いて柱を立てて、古い柱と新しい柱を固定して補強します。
田原家でも立ち上がり部分の基礎を作り、こちらも補強します。
ここで元々あった柱を中心に両側に柱を立てて補強、構造的には別々の建物として補強を行いました。
将来切り離しても、独立して強さを保てる長屋となりました。

屋根には天窓を設置、屋根材には軽量なガルバリウム鋼板を使いますが、2棟の屋根の境目には仕上げを行いません。
共に階段の上に天窓が付く作りですが、階段の位置が両者では異なるので天窓の位置も異なります。

ここで2棟を分ける壁の中に鉄板で作った平たい筒を入れ、屋根の上まで出してつなぎます。
床下に溜まった空気を屋根上で排気する、換気筒を2棟の間に入れ込みました。
上昇気流を活用するので換気効果は抜群ですが、設置コストもかなりのものとなります。
ただ今回の長屋は床下換気が難しい状態なので、かけるコスト分以上の効果を期待できます。

断熱材を境界壁にもしっかり張り込みます。
ここで五山の送り火の残り炭である「消し炭」が魔除けになるということで、早朝から匠と内藤家の息子さんと田原さんが集まって取りに向かいました。
しかしすでに大きな炭は残っていないので、小さな炭を集めて持ち帰ります。

両家の1階には温水式の床暖房を設置、壊した土壁の土はワラスサを混ぜて内藤家の玄関の内壁に再利用です。
田原家の玄関の壁は杉板貼り、縦桟付きで仕上げます。
こちらの壁付きのシステムキッチンは、天板が金網で覆われています。
上にモルタルを塗って、朱色の色子を撒いて均して仕上げます。

内藤家の壁付きシステムキッチンは、カウンターまで優しい木目調の仕上げです。
床暖房を備えたダイニングキッチンとなり、玄関は土色のタイル敷きで式台付き、木と土色に囲まれる穏やかな雰囲気に仕上がりました。

玄関すぐに階段が付いて2階を事務所とすることで、お母さんの生活空間と息子さんの仕事の空間を分離します。
バリアフリーを考えると、1階がお母さんの空間というプランは正解でしょう。
その1階は玄関正面にダイニングキッチンが広がり、庭に面した大きな窓で十分な明るさも確保しています。
折り返した玄関の隣のスペースがお母さんの寝室、畳の縁を壁と色を合わせて楽しい雰囲気も加えています。
キッチンの高さや収納位置も、お母さんの使いやすい高さに調整された専用設計です。

田原家の玄関は板を古色で塗り、天吊りの下足入れとすることで床のタタキ仕上げを広く見せる京都の町家らしいデザインでまとめています。
広いタタキの部分には、バイクや自転車を止められる広さを確保。
こちらは靴脱ぎ石を採用することで、より町家らしさを強調しています。

玄関の正面がダイニングキッチン、こちらはダイニングに階段が付きます。
2階に住む予定の姪っ子さんが、ダイニングには入ってから階段を上がることでコミュニケーションを重視した配置となります。
ダイニングキッチンの一部はタタミ敷きとして、リビングとしての機能も追加しているようです。

こちらも、ダイニングキッチンから折り返しで玄関の隣が田原さんの寝室となります。
床はフローリング仕上げでベッドを使用、収納の扉も壁板と同様の古色仕上げで統一しています。

モルタル仕上げのキッチンカウンターは、姪っ子さんの要望で町家カフェ的な雰囲気を取り入れたようです。
壁は薄炭色なので、カウンターの朱色(ピンク色)がより引き立ちます。
また一部を吹き抜けとして上部の窓からも明かりが入ることで、十分以上の明るさと2階の姪っ子さんとのつながりを感じる効果も備えます。

内藤家の出産シーンを挟んで、リフォームが進みます。
1階の庇部分は伝統的な一文字瓦で葺き、軒下には窓格子も付きました。
両家で少し格子のデザインが異なり、内藤家では格子のピッチ(間隔)が荒く室内が明るい糸屋格子を採用、田原家では防犯重視の格子が細かいピッチで並ぶ仕舞屋格子を採用です。
2階の格子は可動式で、レバー操作で閉じることで西日を遮ることができる工夫が入ります。

匠オリジナルの表札を取り付けて、リフォームの完成です。
外観は玄関ドアまで格子戸とすることで、町家の雰囲気を復元しました。
内藤家は明るい木質と土色の柔らかい仕上げが基本で、引き出し式で容量たっぷりの下足入れに加えてベビーカー置き場も備わります。
玄関の縦手すりは2本として和風を強調、壁はお母さんの日本刺繍を飾るギャラリーにもなります。

ダイニングテーブルは、折りたたみ式で4人分の席を確保。
ただこれは広さや椅子まで考えると、折りたたみにする必然性はなさそうです。

庭に面する窓は2枚を引き込めて、大きな開口で広い縁側が備わる坪庭とつながります。
坪庭は石と苔による和風のデザインで、格子で目隠しされる物干しバーも備わります。
庭の隣が洗面所と浴室、洗面所には直接縁側につながる勝手口付です。
浴室のユニットバスには暖房付き、戸建住宅用としては若干小さめですがアパート並で、必要十分なサイズともいえます。

縁側前のテレビ台の下には、お母さんの為に専用に作られた刺繍用の仕事道具が納まります。
境界壁の面は全て(テレビまわり以外)を収納や仏間とすることで、収納量と防音の両方を兼ね備えます。
造り付けのたんすは交互に色を変えることで、分かりやすさとデザインを両立です。
そのたんすは寝室を仕切る戸の収納スペースにもなり、大きな鏡の入った扉を追加することで、姿鏡の機能も備えます。
天井には、着物を吊るすことができるフックも付きます。

トイレは階段とキッチンの間に作ることで、1階2階の両方から使いやすい位置としています。
2階は低い天井をなくして梁を見せ、天井高さを最大限に確保しました。
2人並んで机を置ける広めの事務所スペースで、広い西窓には可動格子(坂田格子?)で西日を防いだり、雨戸の代わりにもなるアイデア格子が備わります。

隣は赤ちゃんのベッドも置けるユーティリティースペース、ミニキッチンがつき、収納も豊富に備わり多目的に使えそうです。
部屋を仕切る扉には丸い覗き窓が付き、赤ちゃんの様子が伺えます。
さらに奥にはタタミの休憩室付き、布団も入る押入れ付きで客間にもなります。
以上のリフォームで、予算の1500万円を使い切りました。

田原家は落ち着いた町家の色が基本で、玄関収納も2人分としては十分以上の容量があります。
ダイニングキッチンには、流しの背面に電子レンジなどが入る棚で使いやすさを高めつつ、軽く目隠ししています。
階段下も収納として活用、タタミのスペースには仏間も備わります。

こちらの坪庭は濡れ縁を小さめにして、庭石や苔で京都の風景を再現、より和風の庭としています。
洗面所や浴室は内藤家と同じ配置ですが、洗面器やユニットバスのデザインや色を変えています。
半畳の廊下を挟んで、洗面所の対面がトイレとなります。

寝室には、壁一面に長いクローゼットが付きます。
玄関側の壁上部には高窓も付き、西面の細かい格子にもかかわらず明るい寝室です。

階段を上がった2階は姪っ子さんのスペース、古い家具を置いたサブリビングスペースは梁を見せることで天井高さを確保しています。
西面の広い寝室には、引き違い窓の隣に縦スリット窓が4本並びます。
壁一面に長いカウンター机は、読書や化粧やパソコンに使える十分以上の長さがあります。
収納もたっぷりそなわります。

サブリビングに面した吹き抜けの横に、ベランダに通じる通路と洗面付きトイレが備わります。
吹き抜けを介して、サブリビングと1階のタタミスペースがつながります。
専用の物干し場となる2階のベランダからは、坪庭が見下ろせます。
以上のリフォームで、こちらも予算の1500万円を使い切りました。

今回の 劇的!ビフォーアフター 物件233 とんでもなく傾いた長屋 は、初の2棟同時リフォームとなりました。
続き長屋の傾きが危険なほど大きかった為に同時となったのですが、より完全な気持ちの良いリフォームとなった印象がありました。
町家の雰囲気を上手く再現しつつ、将来2棟を分離することも考慮されたところも大きなポイントでした。

2つのリフォームは、部屋の配置では似た部分が多かったのですが、仕上げや雰囲気は見事に個性を使い分けていました。
穏やかで柔らかい雰囲気でまとめた棟と、古色でシックにまとめた棟の対比が、同じ町家の外観でも室内の印象が大きく変わることが分かるリフォームでもありました。
ただ掛かったコストが工事費・材料費・家具その他でまったく同じだったのは、現実的にはありえないと思われます。
お隣さん同士なので、あえて合わせたのでしょう。

今回は2棟同時のリフォームで、一見、他の一般的な住まいのリフォームでは参考にならないとも思われました。
しかしデザインのまとめ方やたくさん詰め込まれた機能やアイデアは、一般的なリフォームでも十分以上に参考とできるリフォーム内容だったといえそうです。
どちらも和風のデザインでまとめていましたが、これだけ印象が異なる住まいになるということが強く印象に残りました。

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