物件269 お客様が一番の家 劇的ビフォーアフターのアイデアをチェック
劇的!ビフォーアフター 物件269 お客様が一番の家(熊本県宇城市 荒川家) で紹介されている、リフォームの役に立つアイデアをチェックしましょう。
今回の劇的!ビフォーアフター 物件269 お客様が一番の家 は、旅館をやめて夫婦二人で暮らす建物のリフォームです。
漁村にたたずむ築75年の木造2階建ての建物は、料理旅館として使っていたもの。
風呂は別棟で広すぎて寒く、母屋の前には客室棟が並び、母屋からはせっかくの景色がほとんど見れない状態です。
母屋の玄関は受付カウンターのために出入りする部分が狭く、調理場は広大で機器は古いなど使いにくさも目立ちます。
生け簀は新鮮な魚を買ってきて美味しく保管するために活用、物干し場は生け簀の上で遠くて負担が大きいものです。
リフォームの予算は2800万円と、夫婦二人の住まいを作るには新築でも十分以上。
母屋26坪に客室棟が50坪と広大なので、どの建物を残すかという点も含めて、目の前に広がる海にの景色を楽しめる、使いやすい住まいにするリフォーム内容に注目
となりそうです。
リフォームの前に、昔仕事をしていた人を呼んで、客室で工事に携わる匠や工務店の人たちをもてなし、旅館の終わりとリフォームの始まりを祝います。
母屋の引っ越しが始まり、大きな金庫も運び出そうとするも中断。
大きく重すぎるので、解体後に運び出すことにしたようです。
解体の手始めに、海から見て左側の客室棟の3分の2ほどを解体。
母屋の前になる部分を解体することで、母屋からの海の景色や採光・風通しを確保しました。
海に近すぎる客室棟は台風などの際に危険なので、残した客室棟で母屋の風よけを兼ねつつ、解体費用を最小限に抑えたようです。
母屋の解体も進んだところで、大きな金庫を運び出します。
リフォームする母屋は1階だけで生活する予定、そこで2階部分は解体せずにほとんどそのまま利用するようです。
基礎は古い石場建ての造り、免震構造の考えが入った優れた工法ですが、石自体の安定性には多少不安が残ります。
また外周の柱には石場建てが無く、38年前に2階(と1階の最外周)を御神楽工法で増築した際に取り去ったようで、基礎が異なり梁なども古さが異なります。
増築の際に1階の丸太の邪魔になる上部分が切られているようですが、2階の床や屋根は外周が支えるはずなので実質は問題ないでしょう。
それよりも、筋交いなどの耐力壁が1階に少ない点が気になります。
傷んだ屋根のセメント瓦を外し、新しい下地を上貼り。
そして耐久性の高い、いぶしの粘土瓦を新たに葺きました。
台風などの強風でも飛びにくい防災瓦を使って、屋根を断熱しつつ伝統的な味わいのある材料を採用です。
基礎は、柱が載る束石に鉄筋を差して周囲を鉄筋コンクリートで補強。
独立基礎として束石をしっかり補強、足固めもしっかり取り付けることで、石場建ての本来の性能を発揮できる作りとしました。
上部が削られた丸太梁は下から柱で支えて補強、柱同士は貫でつないで伝統的な手法で耐震性能を高めます。
足固めと柱や梁と柱を、3角形に加工組み合わせた木材をボルトで取り付けて制振ダンパーとして追加。
金物嫌いの匠のはずですが、取付ボルトは仕方のないところでしょうか。
床下では、大引き下に板を貼って床板との間に木屑を敷き込み自然素材のローコスト断熱材とします。
1階の天井裏には不織布の袋に木屑を入れて断熱、一般的な断熱材よりも性能が今一つの分は、厚みを増やしてカバーです。
ここで匠は軒先の強度を実験で検証、母屋の軒先を大きく飛び出すために、取り付ける釘やビスや金物の違いで一番強い方法を選ぶようです。
引き抜きに強いビスが最も強くスクリュー釘がその次、そこで横風を想定した実験も実施して、横風にも強いスクリュー釘を採用となりました。
一般的な軒先に使われるひねり金物よりも効果が高い点は、要注目といえそうです。
1階の庇として1.3mも飛び出させて、その下には広い濡れ縁も設置。
海の景色を楽しめる日陰の空間を作るとともに、木製となった窓が雨で傷むことも防げます。
木製窓は2枚の引き込みタイプが柱の両側に備わり、大開口で景色を最大限に取り入れます。
断熱の悪さや隙間の多さは内側の障子でカバー、さらに木製雨戸や西日を防ぐ格子付網戸も備わり、安全を高めつつ快適に通風が可能です。
リフォームが完成して、塀やアプローチを化粧直し。
外壁は1階部分を杉板で仕上げ、2階は水切りラインが数本入る漆喰塗りとなりました。
玄関引き戸は格子戸、上り框に石を使った純和風の住まいとなりました。
玄関収納は腰高で、上質な天板を飾り棚としています。
玄関横が洗面所、洗面台や壁仕上げも木で、大きな鏡と木の棚が備わります。
隣の浴室戸は木製の引違いながら段差なし、床の勾配と飛び出したレールで水を止めるようです。
浴室の腰上と天井仕上げは桧で、腰壁と浴槽エプロンは砥石としてもつかわれる天草石。
横長窓から、海が眺められます。
階段は、段板と側桁を組み合わせたオープンな作りとして明るさを確保。
その奥が、ダイニングキッチンとなります。
キッチンは、シンクが対面式で袖壁に隠された冷蔵庫を回ってダイニングに通じるアイランドとも言える配置です。
背面にガスコンロ付の調理カウンターと収納、ワークトップはステンレスで、扉は全て木です。
隣が掘りごたつ付きの和室リビングで、その先にある窓から海が眺められます。
大きな板を組んだ製材製コタツに、一部は古い建具を再利用した障子の組み合わせ。
障子の先には、縁側と板の間寝室が続きます。
和室リビングには仏間が備わり、床の間を利用した金庫置き場兼テレビ置場も備わります。
生け簀につながる勝手口の横には、流しと冷蔵庫を配置。
ガラス戸で廊下と仕切られるその空間は、お父さんの調理スペースです。
一つだけ残した生け簀は化粧直しして、循環ポンプも付きました。
さらに屋外の流しも残して棚を追加、釣竿スペースも追加されています。
和室リビングの隣が寝室、ベッドを置くために板床で、客室で使っていたテーブルセットが置かれる縁側もそなわります。
縁側は和室リビング前に通じていて、和室リビングを仕切る壁の半分は障子なので、開くとワンルーム的に空間が広がります。
縁側には前述の木製大窓が二つ、寝室の隣は廊下を介して最短距離でトイレ。
腰下を古い床板で仕上げ、木製カウンター付きの手洗と木製手摺が備わります。
隣は広い納戸で、道路側となるトイレや納戸や階段で騒音を防ぐ効果もあります。
階段の手すりも木製、壁は漆喰で、高窓にはキャットウォークも備わります。
階段で小さくなった和室は6畳残るので客間にぴったり、階段だった場所は床の間風スペースとしています。
柱で囲まれているものの廊下の見通しを良くする、デザイン上のアクセントポイントとなります。
客室を解体して生まれた庭は砂利敷きで、海まで通じる角材床の回廊が続きます。
終点には、枕木ベンチ付の屋外座敷兼釣り場が備わります。
解体の際に手を付けなかった客室棟は、外観を化粧直しして窓を交換。
入り口を両開きとして、息子さんの趣味であるシーカヤックを収納、休憩できるスペースとして中身にも手を加えていました。
不要な間仕切りを無くし、土足で入れる板床に変更。
厨房のステンレスシンクを流しとして再利用、さらにバーベキューも可能な囲炉裏を追加。
客室の一つはそのまま残して泊まることもできる、息子さんの仲間が集まる海の家に生まれ変わりました。
今回の 劇的!ビフォーアフター 物件269 お客様が一番の家(熊本県宇城市 荒川家) は、伝統工法を生かした純和風のリフォーム内容が印象的でした。
過剰なアイデアは最小限に抑え、スイッチカバーまで自然素材をフル活用。
母屋の前だけを解体して景色を最大限に取り入れ、残った客室棟を息子さんの趣味のスペースとした点も好感が持てました。
実用的なリフォーム内容で良くも悪くも木が主役、派手さや変形などの無駄な面白さはありませんでした。
そんな伝統工法をしっかりリフォームでも取り入れるアイデアや素材の生かし方は、純和風リフォームの手本にできる内容だったといえそうです。